代表あいさつ

バーチャルスライドによる高度な病理検査でがん患者の死亡率低下に貢献します。

 2012年4月、(株)病理診断センターを広島市内において立ち上げ運営してきましたが、2018年4月より、(株)病理センターとひろしま病理診断クリニックとに改組しました。

 私は過去22年間、広島大学(医学部病理学第二講座および医歯薬学総合研究科病態情報医科学講座病理学研究室)において教授を務め、人体病理学の教育・研究と診療(病理診断)に従事してきましたが、退職後もその経験を生かして社会に貢献できる方策を考えてきました。

 現在、医学・医療界では医師不足が云われ、とくに医師の地域偏在(中山間僻地での医師不足)と専門医偏在(小児科、産科などの特定の診療科の医師不足)が深刻ですが、病理診断を専門とする医師も不足しているのが現状です。日本全国では約5,000〜6,000人の専門医が必要と試算されていますが、現在の専門医数は約2,000人であり、とくに地方にいくほどその不足は深刻です。広島県においても現在30人の病理専門医が主として規模の大きい医療機関に勤務していますが、試算では最低でも42人が必要数とされています。ちなみに広島県内には、国指定のがん診療連携拠点病院が11と、これに加えて県独自指定のがん診療連携拠点病院が5病院あり、計16の高い診療能力をもつがん専門病院があります。これらには、がんの病理診断能力の高い専門病理医が常勤していることと定められているにも拘らず、実際には3病院において専門病理医は常勤していません。

 がんの診断・治療には病理診断を欠くことができません。がんであるか否かの判断、がんとするならばどのような治療を行うのが適切であるかの判断などが診断の内容であり、これなくしては臨床医の行うがん診療は成り立ちません。

 このように大切な専門病理医がなぜ少ないのか、とくに若い世代の先生が専門病理医となる道を選ばないかについては様々な理由があります。ひとつは各医療機関に常勤する病理医は1人ないし2人ですので、交代での勤務は困難で、休日をとることもままならない状況です。昨今、医学部に入学する学生の約40%は女性ですが、病理医となれば、結婚、出産、育児もままならないと思われています。すなわち、大きな責任を負いながら、勤務の環境は臨床医に比べて恵まれていません。ふたつ目には、がんの治療は日進月歩であり、がんの病理診断の内容は日々複雑に高度になります。ひとつの医療機関には数多くの診療科がありますので、診断の求められるがんの種類は何千とあります。これらの全てに対応していくには、ひとりないし少数の病理医では不可能であり、コンサルテーションという用語を用いる他の専門病理医に相談することが必要となります。

 こうした問題を解決するには、ICT(Information – Communication-Technology)を活用した病理診断の効率化と専門病理医間の連携が必須となります。すなわち、従来のやり方としての患者さんから得られた組織のプレパラート(ガラス板)標本を顕微鏡でみて診断し、紙面での報告書を作成するのではなく、プレパラート標本をスキャニングしてデジタル化し、光ファイバー網やインターネット回線にのせて伝送できるようにすることで、コンピューター画面上で病理診断し、この報告書も画面上で作成して主治医に返送します。これによって常勤する病理医のいない医療機関でも質の高い高度な病理診断を受けることが可能となります。さらに病理専門医の間でのコンサルテーション(診断の相談)が容易となります。5〜10年先の病理診断は多くの施設で上記のような形で行われるであろうと予想しています。こうすることで、がん診療の均てん化が達成され、現在すすめられている“がん対策基本計画”にもとづく、がん患者の死亡率の低下に貢献できると考えています。

 新しく改組した(株)病理センターは、こうしたICTを活用した病理診断業務の運営に必要な機材、人員などの供給を行い、実際の病理診断はひろしま病理診断クリニックにおいて、病理専門医が行います。こうした分業によって今後、同様の形態で病理診断業務を行うことをめざす病理医の支援や、全国レベルでの協力も行いやすくなると考えています。

略歴

1974年広島大学医学部卒業
1990年広島大学医学部教授(病理学第二講座)就任
2004年広島大学大学院医歯薬学総合研究科教授
(病態情報医科学講座病理学)就任
2004年
(〜2008年)
広島大学医学部長
2012年広島大学定年退職(名誉教授)
2012年NPO法人総合遠隔医療支援機構理事長就任
(株)病理診断センター立ち上げ
2018年(株)病理センターに改組
ひろしま病理診断クリニック立ち上げ
  • (元)広島県がん対策協議会委員長
  • 日本病理学会功労会員(元理事)
  • 日本肺癌学会名誉会員(元会長)
  • 日本乳癌学会名誉会員(元理事)
  • 石綿研究会顧問(元代表幹事)
  • 環境省石綿健康被害判定小委員会委員
  • 厚生労働省石綿確定診断委員会委員